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便秘


「もしかして便秘かも?」 – 便秘の正しい知識と対策

あなたの便、毎日すっきり出ていますか?
便秘は「何日も出ないこと」と思われがちですが、実は毎日出ていても便秘の可能性があります。「隠れ便秘」と呼ばれる状態です。

隠れ便秘とは?

一見すると排便があるけれど便が腸に残っている、それによる症状がある状態。

症状

  • お腹が張る・ガスがたまる。
  • 便が硬くて出しづらい、コロコロのウサギの糞のような便が出る。
  • 少量しか出ない、スッキリ感がない、残便感がある。
  • 強くいきまないと出ない。

これらに当てはまる方は、毎日出ていても古い便が残っており「隠れ便秘」かもしれません。

その他の症状

  • 肌荒れ・吹き出物
  • 便が臭う(悪玉菌優位)
  • 下痢や軟便を繰り返す(便秘型過敏性腸症候群)
  • 痔(いきむことで肛門の負担増)

便秘による長期予後への影響は?

  • 米国では、便秘がある人はない人と比較して全死因死亡率が1.12倍高い。冠状動脈性心疾患が1.12倍多く、虚血性脳卒中が1.19倍多い。
  • 日本では、毎日排便がある人と比較して2-3日に1回の排便群で心血管疾患死亡が1.12倍、4日に1回の排便群で1.39倍上昇。
  • 慢性便秘症患者でパーキンソン病の発症リスクが2.27倍高くなる。

慢性の腹痛、便秘の可能性は?

  • 小児では慢性腹痛の30~50%が便秘関連というデータあり。
  • 成人においても慢性腹痛の20~40%が便秘関連症状というデータあり。
  • 女性や高齢者ではさらに高くなる傾向あり。
    →急性の腹痛は様々な疾患の可能性がありその限りではありません。

実際診察していると

  • 少量ずつしか出ないので回数が多くなる方が下痢、と言って来院されることが多い。
  • さらにそれで下痢止めを処方されてより悪化している方も。
  • 薬剤性の便秘の方も散見されます、処方医とよく相談ください。
  • 急性の腹痛は様々だが、慢性の腹痛は便秘がかなり多い印象。

対策・治療法

① 生活習慣の見直し

  • 朝食をしっかりとる
    →胃結腸反射(胃に食物が入ると大腸が動き出す)を促進、朝食後が最も強い。
    朝は食欲がない、という方はバナナやヨーグルトだけでも摂取しましょう。
  • 十分な水分
    →特に朝起きたらコップ1杯。
    →ただし、過剰に水分を摂っても尿が増えるだけです。
  • 食物繊維(野菜・海藻・発酵食品など)
    →便のカサを増す・腸の動きを促す。
  • 適度な運動(ウォーキング、腹筋をつける)
  • 排便習慣の固定(毎日同じ時間にトイレ座るようにする)

② 薬によるサポート

  • 浸透圧性下剤(酸化マグネシウム・モビコールなど)
    →便を軟らかくする。
  • 上皮機能変容薬(アミティーザ・リンゼス・グーフィスなどの新しい薬)
    → 腸の動きを自然に促す。
  • 漢方薬(大建中湯、桂枝加芍薬湯など)
    → 腸の冷え・ガスなどに有効なケースあり。
  • 刺激性下剤(センノシド・ラキソベロンなど)は現在毎日飲むことは推奨されていません。
    →現在のガイドラインでは、使用は有効であるが、耐性や習慣性をさけるために必要最小限の使用にとどめ、できるだけ頓用または短期間の投与とする、と記載されています。
  • 浣腸・座薬・摘便
    →現在のガイドラインでは、有効であるが適宜使用とし、可能な限り連用は避ける、と記載されています。

③ 画像検査での評価

  • 腹部レントゲンや超音波検査・CTで宿便の確認
  • 内視鏡で通過障害(大腸がんなど)の有無確認
    →大腸がんが否定できればお薬の調整を相談

<よくある疑問>

便通異常症診療ガイドライン2023(慢性便秘症)より抜粋
慢性便秘の有病率は?
  • およそ10~15%と見積もられる。

慢性便秘の発症リスクは?
  • 性別(女性)、身体活動性の低下、腹部手術歴、特定の基礎疾患(精神疾患や神経疾患など)、加齢、および一部の薬剤。

慢性便秘症はQOLを低下させるか?
  • 低下させる。

慢性便秘症は長期予後に影響を与えるか?
  • 心血管疾患の発症・死亡リスクの上昇、パーキンソン病や腎疾患の発症リスクの上昇に関与する為、長期予後に影響を与える可能性がある。しかしながら、大腸がんの発生への関与は不明である。

慢性便秘症における警告症状・徴候は何か?
  • 排便主幹の急激な変化、血便、6ヶ月以内の予期せぬ3kg以上の体重減少、発熱、関節痛、異常な身体所見。
  • また、50歳以上での発症、大腸器質的疾患の既往歴または家族歴、が危険因子。
    →いずれかがある場合は内視鏡検査を行う必要がある。

慢性便秘症に腹部エコー検査は有用か?
  • 有用である可能性があり、行うことを提案する。
  • ひどい場合はCT検査を施行、併用します。

当院では、問診・診察で状態の把握と診断の推測を行い、エコー検査で便の性状や貯留部位・直腸の便の状態(硬さや量)を観察し、必要な処方薬の選択をしています。
“便秘がちょうどよく改善する薬”というものは存在しません。通常、硬い方は軟らかくする薬・動きが弱い方は腸を動かす薬、というように目的の異なる薬を調整しながら処方します。便が硬くて出ない方に動かす薬を多く処方すると腹痛や嘔気が出現、軟らかいのに軟らかくする薬を処方すると下痢になります。やはり問診が大事です。

<よくある質問>

便秘薬を飲みすぎたらクセになるのか?
  • 正しい使用でクセになることはありません。ただし種類により注意が必要なのは事実です。

便秘薬の種類

① 刺激性下剤(センノシド、ラキソベロン、アロエ、センナなど)

  • 腸の動きを強制的に刺激して排便を促す。
  • 即効性あり、使い続けると「耐性(慣れ)」ができやすく、効きが悪くなることあり。
  • 長期乱用で腸の神経が鈍くなる(いわゆる“クセになる”)可能性がある。
    → 現在のガイドラインでは漫然と連用するのは避けるべき(短期使用や頓用を推奨)とされています。

② 非刺激性下剤(浸透圧性下剤)(酸化マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラクツロースなど)

  • 腸を動かすのではなく、便の水分を多くすることにより便をやわらかくする作用。
  • 腸への負担が少なく、長期使用にも比較的安全とされています。
  • 腎機能が悪い方のマグネシウム製剤の長期使用は蓄積性があると言われているため、長期使用時は定期的な採血が推奨されています。
    → ガイドラインでも第一選択薬として推奨されており、適切に使用すれば「クセになる」心配はほぼありません。

③ 上皮機能変容薬(アミティーザ・リンゼス・グーフィスなど)

  • 腸の上皮細胞に働きかけて、水分の分泌を増やす。
  • 腸の中の水分を自然に増やし、つるっと便をスムーズに出しやすくする。
  • 体への負担が少なく、中等度~重度の便秘にも効果的。
  • 副作用が少なく、腎臓が悪い方にも使用しやすい。長期使用も可能。

結局クセになるとは?

  • 漫然と刺激性下剤を使い続けると薬の刺激なしでは腸が動きづらくなることがある。
  • ガイドラインでは非刺激性下剤(浸透圧性下剤)や上皮機能変容薬の適正使用は安全性が高いとされている。
  • クセになるから飲まない、は今やもう昔の話。便秘はQOL低下や他の疾患を引き起こすことがあるので適切に対応が必要。
たかが便秘、されど便秘です。気になる症状のあるかたはご相談ください。