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トップページ >  当院で経験した疾患について >  非外傷性腹直筋血腫

非外傷性腹直筋血腫


当院での診療経過

  • 30代女性
  • 1か月程度持続する咳で他院通院中、咳喘息の診断で吸入薬・咳止めなどで治療中
  • 咳はひどく持続、数日前から右下腹部痛もあり通院中の医院から当院に紹介
  • 診察上は臍右にやや膨隆あり、同部に圧痛あり。内臓の痛みというより表面近くの皮下や筋肉の痛みの疑い
  • 腹部エコーで腹直筋内にやや時間が経過したと思われる血腫あり、30㎜大
    →外傷歴なし、抗血栓剤(血をサラサラにする薬)なし。咳が原因と思われる非外傷性腹直筋血腫と診断。整形外科に紹介し保存治療となる。

非外傷性腹直筋血腫って何?

腹直筋血腫(ふくちょくきんけっしゅ)は、おなかの真ん中にある「腹直筋」という筋肉の中で出血が起きる病気です。
「非外傷性」というのは、転んだりぶつけたりしていないのに自然に出血が起きるタイプのことです。突然のお腹の痛みやしこりで見つかることが多く、出血が多いと急に貧血になることもあります。

どうして起こるの?

以下のような原因で、腹直筋内の血管が破れて出血することがあります
よくある原因やリスク
  • 咳・くしゃみ・排便いきみなどによる腹圧の急上昇、原因としては咳が最多
  • 抗凝固薬や抗血小板薬の服用(ワーファリン、DOAC、アスピリンなど)
  • 高齢・女性・筋力の低下
  • 腹部の注射(インスリンなど)
  • まれに妊娠中にも見られます

→ 特に「高齢の女性で、抗凝固薬を飲んでいる人」がハイリスクです。

どんな症状が出るの?

  • 突然の下腹部の強い痛み(片側が多い)
  • お腹の腫れ・しこり(触ると硬い)
  • 咳や動作で痛みが増す
  • 皮下出血(内出血)が皮膚に現れることも
  • 出血が多いと血圧が下がる・立ちくらみ・動悸などの貧血症状

→ 虫垂炎や鼠径ヘルニアと間違えられることもあります。

どうやって診断するの?

  • 身体診察: 触ると痛い腫瘤があり、咳で痛みが強くなる
  • 腹部CT・エコー検査:
    → 腹直筋内に限局した血腫(筋肉の中に血がたまっている像)
    → 出血量や広がりを正確に評価できます
  • 血液検査: 貧血の有無、凝固異常(INR・PTなど)

→ 超音波(エコー)で分かることもありますが、CTが確定診断に有用です。

治療はどうするの?

軽症の場合(出血が止まっている)
  • 安静・圧迫・経過観察
  • 痛み止めの内服(アセトアミノフェンなど)
  • 抗凝固薬の一時中止や調整を行うことも

中等症以上(血腫が大きい・貧血進行)
  • 輸血や点滴で補正
  • 血管内治療(IVR)による止血術が必要になることも
  • 稀に開腹手術が検討されるケースもあります(再出血やコンパートメント症候群)

まとめ

項目 内容
病名 非外傷性腹直筋血腫
主な原因 咳・排便時の腹圧上昇、抗凝固薬、加齢、女性
主な症状 突然の腹痛・下腹部のしこり・貧血
診断 身体診察+腹部CTが基本
治療 安静・止血・必要に応じてIVR/輸血など
「ぶつけてもいないのにお腹が急に痛くなった」「お腹にしこりができた」「血をサラサラにする薬を飲んでいる」
そんなときは、腹直筋血腫の可能性もあります。
女性に多く・下腹部が好発部位・原因としてはひどい咳が最多です。
特に高齢の方・抗凝固薬内服中の方は、早めの受診と画像検査が大切です。

何度か見たことがありますが、おなかの中の痛みか表面の痛みかは触ればだいたいわかります。しかし、なかなか一般の方では分からないかもしれません、だから消化器内科で診断されることが多いのではないでしょうか。