亜急性甲状腺炎
当院での診療経過
- 40代男性
- 前頚部の腫脹で耳鼻科に通院中、エコーで甲状腺腫瘍疑いと言われ総合病院に紹介受診予定中の方。
- 紹介受診の前日にたまたま健診の頸動脈エコー目的に当院受診、その際に甲状腺について相談あり。
- 甲状腺腫大あり、圧痛あまりなし、発熱なし、問診上軽度甲状腺機能亢進症状の疑いあり。
- 予定通り頸動脈エコーを施行、一緒に甲状腺も観察したところ亜急性甲状腺炎疑い、腫瘍の指摘はなし。
- 翌日総合病院受診予定あり、甲状腺採血は当院では当日結果が出ないためエコー結果を本人に渡し総合病院で翌日相談頂くように説明。
本人は腫瘍の疑いで紹介予定のためとても心配されていたが、診察とエコーの結果亜急性甲状腺炎を強く疑います、と説明したところとても安心されていました。結果的にも診断に矛盾なく、後日本人より腫瘍ではありませんでしたと安心の報告をいただきました。本当によかったです。
そもそも甲状腺(こうじょうせん)って何?
甲状腺は、のどぼとけの下あたりにある小さな“ちょうちょの形”をした臓器です。とても小さいけれど、体の中ですごく大事な「ホルモン工場」の役割をしています。
甲状腺のホルモンって何?
甲状腺が作る「甲状腺ホルモン」は、体のエネルギーの使い方をコントロールするホルモンです。言いかえると、「体の中のエンジンの回転数(スピード)」を決めてくれている!
こんな仕事をしています
- 心臓をドキドキさせる速さを調節
- 食べた物からエネルギーを作るスピードを調節
- 体温をちょうど良く保つ
- 成長や脳の働きを助ける
- 元気が出るようにサポートする
例えるなら…
甲状腺ホルモンは「車のアクセル」
- 出すぎると → アクセル踏みっぱなし → 元気が出すぎる、心臓バクバク、体が熱い、代謝亢進で痩せる(バセドウ病など)
- 出なさすぎると → アクセルゆるゆる → 元気が出ない、体がだるい、寒い、太る、眠い(橋本病など)
つまり…
甲状腺は、体をちょうどよく動かすスピードを整えてくれる、コントロールセンター!
体調がなんだかずっとおかしいとき(すごく疲れやすい・体重が減った・やたら汗をかく・イライラする・眠くて仕方ない…)には、甲状腺が関係しているかもしれません。
・消化器内科をやっていると、体重減少でやってきてよくよく問診すると甲状腺機能亢進症だった、なんてことは時々あります。
・うつ病だと思ったら甲状腺機能低下症だった、なんてことも時々経験します。
甲状腺疾患は疑わないと見つかりません、ホルモン採血・触診・エコーが必要です。
体調がなんだかずっとおかしいとき(すごく疲れやすい・体重が減った・やたら汗をかく・イライラする・眠くて仕方ない…)には、甲状腺が関係しているかもしれません。
・消化器内科をやっていると、体重減少でやってきてよくよく問診すると甲状腺機能亢進症だった、なんてことは時々あります。
・うつ病だと思ったら甲状腺機能低下症だった、なんてことも時々経験します。
甲状腺疾患は疑わないと見つかりません、ホルモン採血・触診・エコーが必要です。
亜急性甲状腺炎ってなに?
亜急性甲状腺炎(あきゅうせいこうじょうせんえん)は、甲状腺(こうじょうせん)に一時的な炎症が起こる病気です。亜急性、というくらいなので急性と慢性の間くらい、数日から数週間くらいの期間の甲状腺炎、ということです。
30代から40代の女性に多いと報告されています。
30代から40代の女性に多いと報告されています。
なにが原因?
多くの場合、風邪などのウイルス感染のあとに起こると考えられています。
ウイルスに対する体の反応が甲状腺に炎症を引き起こすことで、症状が出てきます。
ウイルスに対する体の反応が甲状腺に炎症を引き起こすことで、症状が出てきます。
どんな症状が出るの?
- 首の前側(甲状腺のあたり)が痛い・腫れる
→ 飲み込むときや触ったときに痛むことが多いです - 発熱(38℃以上の高熱が数週間持続することも)
- 疲れやすい、だるい
- 動悸(ドキドキ)、汗が多い、体重が減る
→ 一時的に「甲状腺ホルモンが多く出すぎる状態」になるためです
首の片側から始まって、反対側に移ることもあります。
どうやって診断するの?
- 血液検査
→ 炎症の値(CRP、白血球)、甲状腺ホルモン(FT3、FT4、TSH)などを確認 - 超音波検査(エコー)
→ 炎症のある部分が腫れている様子が見られます
亜急性甲状腺炎のエコー所見(特徴)
- 低エコー域(hypoechoic area)
• 境界がやや不明瞭な低エコー領域が見られる("地図状"に広がることも)
• 楕円形〜不整な形、単発または多発(多発性結節様に見えることもある) - 血流低下(power Dopplerで血流乏しい)
• 炎症性疾患でありながら、血流はむしろ低下しているのが特徴 - 圧痛のある部分とエコー所見が一致
- 左右非対称(片葉優位)
- 周囲への浸潤はなく、腫瘤性ではない
鑑別で重要な疾患
疾患 | 血流 | エコー |
亜急性甲状腺炎 | ↓低下 | 不明瞭な低エコー域、左右差あり |
バセドウ病 | ↑増加 | 全体にびまん性腫大+血流増加 |
慢性甲状腺炎(橋本病) | ↑または正常 | びまん性低エコー・腫大・血流あり |
腫瘍性結節 | 通常は保持 | 明瞭な境界、形状が均一なことが多い |
どうやって治すの?
多くの場合、自然に回復する病気ですが、必要により症状をやわらげる治療が必要です。
甲状腺ホルモンの量が一時的に乱れるため、数週間~数か月かけて回復します。
一部の方は、治った後に一時的に甲状腺の働きが弱くなる(=甲状腺機能低下)こともありますが、ほとんどは元に戻ります。
- 痛みや熱がつらいとき → 消炎鎮痛剤(ロキソニンなど)
- 脈が速くて動悸が強い→β-遮断薬(メインテートなど)
- 症状が強いとき → ステロイド薬(プレドニゾロンなど)を短期間使うことも
甲状腺ホルモンの量が一時的に乱れるため、数週間~数か月かけて回復します。
一部の方は、治った後に一時的に甲状腺の働きが弱くなる(=甲状腺機能低下)こともありますが、ほとんどは元に戻ります。
まとめ
- 亜急性甲状腺炎は、ウイルス感染後などに甲状腺が一時的に炎症を起こす病気です
- 前頚部の痛み・腫脹・発熱・動悸などが出ることがあります
- 治療は痛みを抑える薬が中心で、自然に治っていく病気です
- 一部の人ではホルモンのバランスが乱れるため、経過をしっかり観察することが大切です