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腹膜垂炎


当院での診療経過

  • 20代男性
  • 数日前からの左下腹部痛が持続(排便で強くいきんだ後から)、微熱。嘔吐や下痢はなし
  • 体動で痛みの悪化あり、股関節を曲げると痛みの悪化有り
  • 診察上は左下腹部に圧痛あり、腹壁すぐ下あたりの浅い部位に原因がありそう
  • エコー検査でS状結腸周囲の腹壁直下に脂肪織の炎症あり、憩室確認できず。採血で炎症はほとんどなし。腹膜垂炎の疑い。
→CT追加し診断に矛盾なし。

腹膜垂炎ってなに?

腹膜垂炎(ふくまくすいえん)は、大腸の表面についている脂肪の“ひも状の小さな突起”に炎症が起きる病気です。
医学的には「腹膜垂(epiploic appendage)」という脂肪の突起に、ねじれや血流障害が起こることで発症します。
見た目や症状が虫垂炎(いわゆる盲腸)や憩室炎と似ているため、まちがって手術されてしまうこともあるくらい、診断が難しいけれど良性の病気です。
肥満男性に多いと言われ、あらゆる結腸で生じます。好発部位はS状結腸と上行結腸と言われています。

なぜ起こるの?

腹膜垂は誰にでもある正常な構造ですが、以下の理由でねじれたり血流が悪くなったりすると炎症を起こします
  • 急激な体の動きや腹圧の変化
  • 肥満や運動不足
  • 腸の動きが強くなったとき(便秘、腹部緊張など)

肥満男性が激しい運動をすると起こりやすいと言われています。

どんな症状が出るの?

  • お腹の一部に急に痛みが出る(多くは左下腹部だが、右側や上の方の場合も)
  • 痛みは持続的で、体を動かすと響く
  • 熱はないか、出ても微熱程度
  • 吐き気・下痢・便秘はあっても軽度

虫垂炎や憩室炎よりも軽い症状のことが多いです。

どうやって診断するの?

血液検査では軽い炎症反応があるか、まったく異常がないこともあります。
確定診断には、画像検査が必要。腹部CT検査またはエコー検査が非常に有効です。
CTでは、腹膜垂の場所に小さな炎症像(脂肪が白くなっている部分)が写り、虫垂炎や他の病気と見分けることができます

治療はどうするの?

腹膜垂炎は、自然に治ることが多い良性の病気なので、ほとんどの場合、手術は不要です。
治療は
  • 消炎鎮痛薬(ロキソニン、カロナールなど)で痛みを和らげる
  • 経過観察(数日〜1週間で自然に改善)

症状が強ければ一時的に絶食や点滴を行うこともありますが、入院せずに外来で対応できるケースが多いです。

まとめ

  • 腹膜垂炎は、大腸の周りにある脂肪の一部に炎症が起きる病気です
  • 症状は軽い虫垂炎や憩室炎に似ていますが、自然に治ることがほとんどです
  • 腹部CTやエコーで診断できます
  • 治療は基本的に薬と安静だけでOKです

「お腹が痛いけど、熱はない」「虫垂炎かと思ったら違った」
そんなときに見つかることが多い病気です。
しっかり診断して、不要な手術を避けることが大切です。